住宅

「長期優良住宅にした方がいいの?」
「長期優良住宅だと税金や金利が優遇されるって本当?」
これから住宅を建てるにあたり、このような疑問をお持ちの方も多いでしょう。
結論からいうと、長期優良住宅の場合に所得税や固定資産税などの税金、住宅ローンの金利などが優遇されるのは本当です。
通常の住宅を建てる場合に比べると、税率が引き下げられたり減税期間が長くなったりするため、有利になることは間違いありません。
しかし、だからといって必ずしも長期優良住宅が最適であるとは言い切れません。
なぜなら建築費が高くなったり、建築期間が長くなったり、建築後のメンテナンスにも制限が付いたりするからです。
当記事ではどのような人に長期優良住宅が向いているのか、また、そもそも長期優良住宅とはどのような建物なのかについて解説します。
お読みいただければこれからの家づくりに役立ちますので、ぜひご覧ください。

長期優良住宅とは?

長期優良住宅とは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」です。
長期優良住宅の普及の促進に関する法律」によって定められており、令和5年3月末時点で全国累計147万戸以上の新築住宅が認定されています。
また、令和4年度においては、認定を受けた新築戸建て住宅が11万5509戸であり、新築戸建て住宅の着工戸数に対する割合は29.3%となっています。
参考:国土交通省 長期優良住宅建築等計画の認定実績
参考:国土交通省 報道発表資料

長期優良住宅の認定を受けるためには、申請手続きが必要だったり住宅性能の基準をクリアしなければいけなかったりとそれなりにハードルは高いです。
しかし、所得税の減税や住宅ローンの金利優遇などを受けることができるため、予算や時間に余裕のある場合はできるだけ利用したい制度となっています。

長期優良住宅の認定を受けるための5つの基準

長期優良住宅に認定を受けるためには、以下の5つの基準をすべて満たす必要があります。

1.住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
2.住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
3.地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
4.維持保全計画が適切なものであること。
5.自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること。

引用:国土交通省 長期優良住宅のページ

少し抽象的な表現となっているため、どのような住宅にしたらよいのか具体的なイメージが浮かびづらいと思いますが、これらの基準をすべて理解しておく必要はありません。
実際にはハウスメーカーや工務店が上記の基準に沿った設計をおこない、長期優良住宅の審査に通ってから着工します。
そのため、居住者としては、長期優良住宅とは劣化対策や災害対策などが施された性能の高い住宅であるという点を把握しておけば大丈夫です。
詳しい基準を知りたい方は、上記の国土交通省ホームページをご覧ください。

長期優良住宅の4つのメリット

長期優良住宅のメリットとしては以下の4つがあります。

1.税金が軽減される
2.住宅ローンの金利が優遇される
3.地震保険料が割引される
4.高性能な住宅に住める

基本的には費用面でのメリットが大きいです。
住宅は建ててからの各種支払いも大変になってきますので、どのくらい軽減されるのか覚えておきましょう。
1つずつ紹介します。

メリット1.税金が軽減される

長期優良住宅の1つ目のメリットは、税金が軽減されることです。
所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税の4つが軽減されます。
それぞれの軽減内容は以下の通りです。

【所得税】
長期優良住宅に入居すると、以下の所得税の減税措置が受けられます。

控除の種類控除の内容
住宅ローン減税借入限度額:4,500万円(子育て世帯等で令和6年1月1日~令和6年12月31日に居住した場合は5,000万円)
控除期間:13年
控除率:0.7%
最大控除額:4,095,000円(子育て世帯等で令和6年1月1日~令和6年12月31日に居住した場合は455万円)
投資型減税控除額:45,300円 × 家屋の床面積 × 0.1
最大控除額:65万円
※当該控除をしてもなお控除しきれない金額がある場合には、翌年分の所得税額から控除

※住宅ローン減税と投資型減税の併用は不可

【登録免許税】
家屋の所有権保存登記等に係る税率が一般住宅特例より引き下げられます。

本則一般住宅特例長期優良住宅
所有権保存登記0.4%0.15%0.1%
所有権移転登記2.0%0.3%戸建て:0.2%
マンション:0.1%

【不動産取得税】
課税標準からの控除額が一般住宅特例より増額されます。

一般住宅の場合   ⇒ 控除額:1,200万円
長期優良住宅の場合 ⇒ 控除額:1,300万円

【固定資産税】
固定資産税の減額措置の適用期間が一般住宅より延長されます。

一般住宅特例長期優良住宅
戸建て(2階以下)3年間 1/25年間 1/2
マンション等5年間 1/27年間 1/2

参考:国土交通省 認定長期優良住宅に関する特例措置

メリット2.住宅ローンの金利が優遇される

長期優良住宅の2つ目のメリットは、住宅ローンの金利が優遇されることです。
長期優良住宅の場合、フラット35の借入金利を一定期間引き下げた「フラット35S」というプランにすることができます。
年間0.25%~0.75%の金利を引き下げることができるため、通常のフラット35に比べると総返済額はかなりお得になります。

金利引き下げメニュー金利引き下げ期間金利引き下げ幅
フラット35S(ZEH)当初5年間年0.75%
フラット35S(金利Aプラン)当初5年間年0.5%
フラット35S(金利Bプラン)当初5年間年0.25%

※住宅の性能によって「ZEH」「金利プランA」「金利プランB」が変わります。

フラット35S 返済例

画像引用:住宅金融支援機構 【フラット35】S

メリット3.地震保険料が割引される

長期優良住宅の3つ目のメリットは、地震保険料が割引されることです。
地震保険とは、地震や噴火によって引き起こされた火災や倒壊、津波などの被害を補償する災害専用の保険です。
地震保険単体で契約することはできず、火災保険とセットで契約するものになっています。
長期優良住宅には耐震性の基準が設けられており、耐震等級2以上でなければいけません。
そのため、地震保険の「免震建築物割引」か「耐震等級割引」のどちらかには必ず該当します。
また、この割引はどこの保険会社で契約しても同じとなっているため、割引率で保険会社を選ぶ必要はありません。
それぞれの割引率は以下の通りです。

割引の種類適用条件割引率
免震建築物割引免震建築物に該当する建物であること50%
耐震等級割引所定の耐震等級を有していること耐震等級1:10%
耐震等級2:30%
耐震等級3:50%

メリット4.高性能な住宅に住める

長期優良住宅の4つ目のメリットは、高性能な住宅に住めることです。
長期優良住宅として認定を受けるためには、様々な基準を満たさなければいけません。
一般的な住宅よりも優れた点が多くありますので、そのような性能の高い住宅に住めることは大きなメリットといえるでしょう。
具体的には以下のような項目を満たす必要があります。

項目詳細
居住環境住宅の良好な景観や、その他の地域における住居環境の維持や向上に配慮されていること。
住戸面積延床面積75平方メートル以上。
また、階段部分を除いて1階の床面積は40平方メートル以上。
省エネルギー性断熱性能の向上や給湯設備の省エネ化などにより、断熱等性能等級5以上、かつ、一次エネルギー消費量等級6以上であること。
劣化対策木造の場合は点検口の設置や床下空間330mm以上の確保、鉄骨造の場合は防錆措置を施すなどして、数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できる住宅であること。
耐震性耐震等級2以上であること。
維持管理・更新の容易性配管設備などの点検やメンテナンスを容易におこなうための措置が講じられていること(維持管理対策等級3以上)。
高齢者等対策共用廊下の床は段差のない構造にする、共用階段の幅は900mm以上確保するなどして、高齢者への配慮がされていること。

参考:国土交通省 長期使用構造等とするための措置及び維持保全の方法の基準

長期優良住宅の3つのデメリット

長期優良住宅のデメリットとしては以下の3つがあります。

1.高性能な住宅にするため建設費が高い
2.申請や手続きに時間と費用がかかる
3.居住後も定期的なメンテナンスや点検が必要

長期優良住宅は税金や金利の優遇があったり、住宅性能が向上したりとメリットが多いですが、一方でデメリットといえる部分もあります。
住宅購入で後悔しないためにはどちらもよく理解した上で検討することが大切ですので、デメリットについても覚えておきましょう。
1つずつ解説していきます。

デメリット1.高性能な住宅にするため建設費が高い

長期優良住宅の1つ目のデメリットは、建設費が高いことです。
断熱性や省エネルギー性、耐震性などを高めるためには住宅構造も大事ですが、使用する素材によっても大きく変わってきます。
窓ガラスであれば安価なフロートガラスよりも合わせガラスや複層ガラスの方が断熱性は高いですし、給湯設備も省エネ性能が高いほど高価になる傾向があります。
長期優良住宅の認定を受けるためには、このように1つ1つの素材や設備にもこだわらなければいけません。
税金や金利の優遇があるとはいっても、費用は一般住宅に比べて高くなる場合がほとんどです。
ハウスメーカーや工務店とよく相談して、予算内で建築できるのかをしっかりと話し合うようにしましょう。

デメリット2.申請や手続きに時間と費用がかかる

長期優良住宅の2つ目のデメリットは、申請や手続きに時間と費用がかかることです。
一般住宅に比べると、申請で1ヶ月程度の期間が必要であり、申請費用として20~30万円ほどかかります。
具体的な流れは以下の通りです。
長期優良住宅を建築する場合、まずはハウスメーカーや工務店と話しあって、住宅の設計をします。
設計が終わったら、その資料を基に「登録住宅性能評価機関」に技術的な審査を依頼します。
審査に合格すると「適合証」が交付されるため、今度は適合証と必要書類を用意し、「所管行政庁」に認定申請をします。
申請が受理されて問題がなければ「認定通知書」が交付され、ここで初めて着工が可能となります。
依頼や申請などは建築会社がおこなうため、居住者に手間がかかることはありませんが、時間と費用がかかってしまうことは覚えておきましょう。

デメリット3.居住後も定期的なメンテナンスや点検が必要

長期優良住宅の3つ目のデメリットは、居住後も定期的なメンテナンスや点検が必要になることです。
長期優良住宅では今後の点検内容なども事前に計画して、その計画書を申請時に提出します。
居住後は計画書に沿って定期点検をおこない、必要に応じて修繕もしていかなければいけません。
もしこれらの点検や修繕を怠ってしまうと、長期優良住宅の認定を取り消されてしまう場合もあります。
そのため、長期優良住宅は建てて終わりというわけではなく、居住後も必要に応じてメンテナンスしていかなければいけないことは頭に入れておきましょう。
ただし、これらのメンテナンスは住宅を快適で安全に使い続けていくためのものでもあります。
計画書があることで忘れずにメンテナンスがおこなえて、住宅をより長持ちさせることができると考えれば、一概にデメリットとはいえない部分でもあるでしょう。

長期優良住宅にするかは予算と将来設計を基に考えよう

長期優良住宅と一般住宅にはそれぞれにメリット・デメリットがあり、一概にどちらが良いとはいいきれません。
長期優良住宅は性能が高く安心して長く住み続けられる反面、コストと時間がかかりますし、居住後のメンテナンスをしっかりとおこなう手間もかかります。
一方で、一般住宅は比較的安価に建てることができますが、断熱性や省エネ性などの性能面では劣りますし、災害等が起きた時のことを考えると不安も残ります。
どちらにするか判断する場合には、やはり予算と将来設計が重要です。
居住後も無理なく生活ができる予算で建てられるのであれば、長期優良住宅が向いているといえますが、予算が十分でもそれほど長く住む予定がないのであれば、一般住宅にするという考え方もあります。
1人で決めるのが難しい場合には、弊社「まごころ工務店」にぜひ1度ご相談ください。
お客様の現状と将来設計を考慮して最適な提案をさせていただきます。